【コラム】プロに教わるパスタ作りの基本・その1~パスタの選び方&おいしいゆで方~

日本人にとって、もはや家庭料理のひとつとしてもすっかり定着している感のあるパスタ。プロが実践している基本的なコツがわかれば、今よりもっとおいしく作ることができます。そこで、イタリア料理界のレジェンド、東京・経堂「エル・カンピドイオ」オーナーシェフの吉川敏明さんに、パスタの作り方の基本中の基本を教えていただきましょう。著書『「エル・カンピドイオ」吉川敏明のおいしい理由。イタリアンのきほん、完全レシピ』から、2回にわたってご紹介します。

パスタの選び方

数あるパスタの中から、ここではご家庭で手に入りやすいパスタに絞ってご紹介します。

ロングパスタは、スパゲッティとリングイーネの2つ。イタリアでは、このソースにはこのパスタ、といった具合に組み合わせがおおよそ決まっていますが、ご家庭で気軽に楽しむなら、この2種類でカバーできます。

日本では直径1.6mm前後の細麺が人気ですね。これは正しくは「スパゲッティ-ニ」といって、スパゲッティとは違う種類。正真正銘のスパゲッティは、直径1.8mm~2mm。

しかも、太いほうがおいしく作れます。

まず、スパゲッティは丸みを帯びているのでソースの“のり”があまりよくないのですが、太いとよりソースがからみやすいのです。また太いとしっかり噛むので、口の中でパスタの旨みが広がりやすいのです。

細い麺にはそのよさもありますが、伝統的なパスタソースは太めのスパゲッティが合うことは確か! パスタの本場ナポリはもちろん、イタリアの家庭ではスパゲッティーニよりスパゲッティが一般的。ぜひ太麺のおいしさを味わってください。

ショートパスタはペンネ(羽根ペン形)、フジッリ(らせん形)、ファルファッレ(蝶形)の3つ。チーズソース、クリームソースのような液状のソースでもからみやすく、使いやすいパスタです。



おいしく作るための段取り

パスタ料理には「パスタをゆでる」と「ソースを作る」の2つの作業があります。同時に仕上げて合わせるのが理想ですが、ピタリと一致させるのはなかなかむずかしい。ソースなら、でき上がってからパスタがゆで上がるまで、火を止めて待つことができますが、逆は無理。ゆで上がったパスタはソースが完成するまでおいておけません。

そこで、「ソースを先に準備する」。これを基本にしますが、ゆで汁をソースに使うことが多く、ゆで汁を沸かすのに時間がかかるので、ソースを作り始める前に、まず湯を沸かし始めてください。ソース作りが終盤に近づき、作業に余裕ができたらパスタをゆで始めます。

例外は、ソースが10分以内でできる簡単な料理。たとえば「スパゲッティ・アーリオ・オーリオ」「ゴルゴンゾーラのペンネ」などは、パスタをゆで始めてからソースを作っても充分間に合います。

いずれの場合も、パスタのゆで上がりが近づいたら、冷めて少し煮詰まったソースをゆで汁でのばし、温め直してパスタと和えます。

基本の段取り

1.パスタ用の湯を沸かし始める。
2.ソースを作り始める。
3.ソースができたら火を止める。
4.パスタをゆで始める。
5.ゆで上がりが近くなったらソースを温めなおす。
6.ゆで上がったらソースをからませる。

パスタのおいしいゆで方

大切なのは、火加減とゆで加減。軽く沸き立つ状態で、ロングパスタは袋の表示時間どおりにゆでてください。「表示の2分前にゆで上げるのがよい」と解説されることが多いのですが、ご家庭ではその必要はなし。むしろプラス1~2分かけてもいいくらい。これで充分アルデンテを保てます。パスタは、ラーメンのようにすぐにのびません。安心してください。

一方、ショートパスタは表示時間プラス2分を基準に。ロングパスタよりも2倍以上の厚みがあり、噛んだときのボリューム感があるので、心持ち柔らかめにゆでるほうがおいしく感じられます。表示時間どおりにゆでて、ソースと一緒に少し煮込む方法でもかまいません。ソースとのなじみもよくなります。

なお「アルデンテ」とは、細い白い芯が目に見える状態で、ゆで上げたときにアルデンテであることが必要です。食べる頃には余熱で火が入り、芯はなくなりますが、まるで芯があるような“弾力”の感じられるものが理想の硬さです。

ゆで方

  1. 12人分のロングパスタをゆでるには、水2lと塩16gを用意。塩分濃度は0.8%。
    ※一般に塩分濃度は1%といわれますが、最近はイタリアでも減塩傾向で0.8%くらいが標準。これはお吸いものの食塩濃度と同じで、飲んでちょうどよい塩味です。
  2. 2塩は水が沸騰してから入れる。すぐに溶ける。
    ※塩分の強いドライトマトを使うパスタ料理では、塩分濃度はやや抑えて0.7%に。
  3. 3ロングパスタは、束をつかんで、まず鍋の中心に立てる。
  4. 4パッと離せば、パスタが平均的に散らばる。
    ※イタリアでは「パスタをゆでるのは女性や子どもを扱うのと同じ」と言います。ある程度かまわないとダメ、でもかまいすぎてもいけないという意味ですよ。
  5. 5湯から出ているパスタをトングや菜箸で沈め、再沸騰したら、パスタ同士がくっつかないようほぐす。
    ※弱火~弱めの中火でゆでます。小さい泡がポコポコと上がり、パスタがゆっくり水中で動く火加減。激しく泡が浮く強火では、パスタ同士がこすれて表面が溶けてきます。
  6. 6ロングパスタは、袋の表示時間どおりに静かにゆでる。火加減は弱火~弱めの中火。いじりすぎないこと。
    ※何度も混ぜると湯温が下がってゆで上がりに時間がかかります。とくにショートはこすれて欠けたりするので放っておきます。
  7. 7ロングパスタは、湯から上げて3秒おいてから、1本の中心を指の腹で押さえて柔らかさを確認。
    ※簡単にブツッと切れたら、ゆで上がっていない証拠。硬いほうが切れやすいんです。ゆだって弾力が出てくると切れにくくなります。
  8. 8ショートパスタはへらにのせ、真ん中を触って確認。ショートはロングよりも柔らかめに。
    ※ロングもショートも、ゆで上がりの確認は湯から上げてすぐではなく、3秒おいて表面の水分をとばしてから。これで本当の硬さがわかります。
  9. 「その2」ではソースとの合わせ方からお皿の準備までをご紹介します。

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    吉川敏明(よしかわ としあき)/1946年、東京生まれ。1965年、19歳でイタリアへ渡り、ローマのホテル学校「エナルク」で学ぶ。卒業後、ローマのレストランなどで勤務。帰国後、都内のレストランなどで料理長を務めたあと、77年、西麻布に「カピトリーノ」をオープン。本場そのもののイタリア料理が食べられると、人気を博す。2008年に店を閉め、2009年、経堂に移転、“ローマ風ワイン居酒屋”として「エル・カンピドイオ」をオープンした。今でもイタリアの料理文献や現地の新聞、雑誌を読むなど、豊富な知識を持ち、著書も多数。師と仰ぐイタリア料理人も多い。

    撮影:日置武晴