【コラム】プロに教わるパスタ作りの基本・その2~湯きりから仕上げまで~

今日お届けするのは、イタリア料理界のレジェンド、東京・経堂「エル・カンピドイオ」オーナーシェフの吉川敏明さんに、パスタの作り方の基本中の基本を教えていただくコラムの第2弾です。今回はゆで上がったパスタの湯きりから、お皿に盛る直前までを教わります。

湯きりのコツ

ゆで上がったパスタはざるにあけたりせず、ロングパスタならトングでつかみ、ショートパスタなら穴じゃくしか小ぶりのストレーナーですくい、直接ソースに入れます。

そのコツは、パスタをゆっくり引き上げたら、軽く2~3回ふって湯をきり、パスタからポツンポツンとたれるゆで汁とともにソースへ入れる、これくらいがちょうどよい湯きり加減です。一度の作業ですみ、パスタからしたたり落ちるゆで汁も一緒にソースに入れられますから。ゆで汁が少量入ることでソースがうまくからみ、なめらかに仕上がります。

ソース作りはフライパンで

ソースを作るのは、鍋ではなくフライパンが便利です。口径が広く、焦げにくいので作りやすいですし、パスタと混ぜるのもとてもラク。深さがあって、側面が上に開いている形のものが、混ざりやすくベストです。2人分なら直径24~26cmが手頃。

ショートパスタは、混ぜるときにフライパンから飛び出しやすいですね。そんなかたは、パスタのゆで鍋を利用すると便利です。ゆで上がったらパスタとゆで汁をいったんボウルなどに移し、空になったゆで鍋にソースとパスタを入れて混ぜるのです。パスタが飛び出さず、鍋が温かいので保温にもなります。分量を多く作る場合は、このほうが便利です。

ゆで汁はおいしいブイヨン

イタリアでは、パスタのゆで汁を「ブオン・ブロード=おいしいブイヨン」と呼んでパスタソースに活用します。塩味と、パスタから溶け出た小麦の旨みがあるからです。

たとえば、パスタソースが煮詰まったときにのばしたり、味を凝縮させるときにゆで汁でいったん薄めてから煮詰めたり。これは水分調整だけでなく、ブイヨン的な旨みや塩味を利用しているのです。塩味は、塩をふってつけるより、ゆで汁の塩分を利用したほうがマイルド。私はソースの塩を控えめにし、ゆで汁を加えて煮詰めて、塩味をととのえています。

パスタをソースに加えたあとも、ゆで汁でのばすことがあります。パスタやチーズがソースの水分を吸うので、ゆで汁で水気を補わないと、パサついた仕上がりになりますよ。

急がなくていい、しっかり混ぜる

パスタとソースを混ぜるとき、心してほしいのは「あわてない」「急がない」。日本人には、1秒でも遅れると「パスタがのびてしまう!」という思い込みがあるようです。パスタはラーメンのように簡単にはのびません。普通に混ぜればいいんです。大急ぎで混ぜることより、ゆっくり、しっかり混ぜることのほうが大事。よく混ぜて、ふたつをなじませると味がぐんとよくなります。

プロの料理人はフライパンをあおって混ぜますが、慣れていないとパスタが飛び出しますから、初心者はトングでぐるりぐるりと混ぜましょう。

仕上げのチーズは火を止めてから

調理の最後にチーズやオリーブ油を混ぜることの多いのが、パスタ料理です。どちらの場合も、必ず火を止めてから混ぜてください。風味を生かすためです。また、一度に全量を入れず、チーズなら2回に、オリーブ油なら数回に分けて、そのつど混ぜるのが均等にからめるコツ。チーズはとくにソースの水分を吸収しやすいので、一度に入れると一か所で固まってしまうことになりかねません。

パスタを盛る皿は温めて!

パスタ料理は、必ず温めた皿に盛ってください。冷たいままの皿にのせるとパスタの表面が冷えてしまうだけでなく、硬くなって食味が落ちます。パスタがゆで上がる2分ほど前に、皿にゆで汁を少量張って温めるか、パスタをゆでている鍋に焼き網やざるなどをのせ、その上に皿を重ねておけば蒸気で温まります。 

ただし、手で持てないほどに熱くしないように。2分前から温めるぐらいで、適温になります。




納得のポイントがいくつもありましたね! ゆでるまでの工程は、こちらの 【コラム】プロに教わるパスタ作りの基本・その1~パスタの選び方&おいしいゆで方~をご覧ください。

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吉川敏明(よしかわ としあき)/1946年、東京生まれ。1965年、19歳でイタリアへ渡り、ローマのホテル学校「エナルク」で学ぶ。卒業後、ローマのレストランなどで勤務。帰国後、都内のレストランなどで料理長を務めたあと、77年、西麻布に「カピトリーノ」をオープン。本場そのもののイタリア料理が食べられると、人気を博す。2008年に店を閉め、2009年、経堂に移転、“ローマ風ワイン居酒屋”として「エル・カンピドイオ」をオープンした。今でもイタリアの料理文献や現地の新聞、雑誌を読むなど、豊富な知識を持ち、著書も多数。師と仰ぐイタリア料理人も多い。

撮影:日置武晴