【コラム】プロに教わる、簡単・上手に海老の揚げものを作る方法

今日は「エビフライの日」。そこで、上手に揚げものを作るコツについて、東京・南麻布の日本料理店「分とく山」総料理長・野崎洋光さんに教えていただきます。目からうろこの発想で、揚げ上がりのタイミングが格段にわかりやすくなりますよ。しかも、ころも次第で味や食感が変わって、おいしさも楽しさも倍増です。
パン粉、あられ、クラッカー……、火が入っているころもなら
揚げものが簡単
ご家庭で揚げものをするときに、「どのぐらいまで揚げたら引き上げればいいの?」と迷うことはありませんか? それが解決できる方法があるんです。ころもを、すでに火の通っている素材にしてください。たとえばパン粉やあられ、クラッカーなど。これだけで揚げものが簡単になります。
なぜなら、揚げもので難しいのは、ころもと素材のどちらにも火を通す必要があること。そのころものほうに火が通っていれば、素材にちょうどよく火が入ればいい。海老やいかのように、さっと火を通して柔らかくジューシーに味わいたい素材はとくにそう。私は、火の通ったころもを使うことは、水泳にたとえると誰にでもラクに泳げる“浮き輪”をつけることだって言うんです。
その点、天ぷらは難しい。小麦粉と水で溶いたころもにきちんと火を通し、水分を飛ばしながら、中の素材には火が入りすぎないようにする。さっと火を通したい素材であるほど、難しいです。
揚げるときに気をつけること
では、実際に揚げるときのポイントをお教えしましょう。
油に入れたら、あまり動かさないこと。油の中に浮いていて全体に火が通るので、ほおっておいても平気。動かしすぎると、ころもがはがれやすくなります。素材に火が通ったら自然に浮いてきますから、それが揚げ上がり。
しかし、いくつか注意点があります。新びき粉やあられは浮いてくるのが早いので、すぐに引き上げず、ちょっとだけ待ちましょう。コーンフレークは甘みがついていて焦げやすいので、油の温度は低めにしてください。
今回は天つゆをつけずそのまま食べる揚げものなので、あつあつのうちに塩をふりましょう。味がのってくれます。それならはじめから素材に塩をしておけば?と思うかもしれませんが、そうすると堅くなりやすいので、仕上げにふるのがベストです。
では実際に海老を揚げてみましょう。
材料(作りやすい分量)
- 海老
- 10尾
- ころも
- 道明寺
- 適量
- 新びき粉
- 適量
- コーンフレーク
- 適量
- あられ
- 適量
- クラッカー
- 適量
- 卵白
- 2個分
- 薄力粉
- 適量
- 揚げ油
- 適量
- 塩
- 適量
作り方
- 1
ころもを砕く。
コーンフレークとクラッカーは、手で細かく砕く。こうすると海老につきやすく、食感もよくなる。 - 2
殻をむき、背わたを取り除く。
海老は殻をむき、背側に横から切り目を入れる。包丁の先で背わたを取り除く。 - 3
海老を軽く洗う。
ボウルに水を入れ、海老を入れて軽く洗い、臭みを落とす。
※塩水を使うと味がつくので、普通の水を使います。 - 4
水気を拭き取る。
タオルにのせ、上から軽く押さえて水気を拭き取る。強く押さえつけないように。 - 5
楊枝を刺す。
海老を丸めて形を整え、楊枝を刺す。 - 6
卵白を布ごしする。
卵白をさらしでこして、サラサラにする。こうすると素材にまんべんなくつく。 - 7
海老に薄力粉と卵白をつける。
5の海老に刷毛で薄く薄力粉をまぶし、卵白にくぐらせて全体にまんべんなくつける。
※卵白はころもをつけるためののりです。全体にムラなくつけてください。 - 8
ころもを付ける。
5種類のころもを、それぞれ海老にまぶしつける。 - 9
揚げ油を用意する。
天ぷら鍋に揚げ油を入れ、160℃ぐらいに熱する。クラッカーを入れてほんの少し泡が出るぐらいが目安。
※火の入ったころもは水分が少なく焦げやすいので、天ぷら(170~180℃)よりも低めの温度にします。 - 10
揚げ始める。
9にコーンフレークごろも以外の海老を入れる。入れてすぐは沈んで、ほんの少し泡が出る程度。 - 11
揚げ終わり。
上に浮いてきたら揚げ終わり。海老に火が通った証拠。火が入りすぎるとおいしくないので、揚げすぎに注意。
※この揚げものでは、あまり色をつけません。 - 12
網に取って塩をふる。
手早く網に取り出し、すぐに塩をふって味をつけ、油をきる。 - 13
コーンフレークごろもを揚げる。
油温を少し下げ、コーンフレークごろもの海老を入れる。
※コーンフレークは焦げやすいので、いったん油の温度を少し低めにして揚げましょう。 - 14
浮いてきたら引き上げる。
沈んでいた海老が浮き上がったら揚げ終わり。引き上げて網に上げ、塩をふる。
Point
●道明寺粉…もち米を蒸して乾燥させたもの
●新びき粉…道明寺を砕いて炒ったもの
●コーンフレーク…水などで練ったとうもろこし粉を加熱してから乾燥し、炒ったもの
●あられ…ごく小さく切った餅を揚げたもの
●クラッカー…塩味の強いビスケット
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野崎洋光(のざき ひろみつ)/東京・南麻布の日本料理店「分とく山」総料理長。1953年福島県古殿町生まれ。武蔵野栄養専門学校を卒業。栄養士でもあり、従来の考え方にとらわれない今の時代に合った料理哲学をやわらかな語り口で、分かりやすく説く稀有な料理人。常に家庭料理の大切さ、家庭でしか作れないおいしさを唱えている。『野崎洋光 和のおかず決定版』(小社刊)、『日本料理 前菜と組肴』(柴田書店)など、著書も多数。
撮影:三木麻奈
「分とく山」野崎洋光のおいしい理由。和食のきほん、完全レシピ

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