【コラム】メレンゲスの由来はやっぱりメレンゲ? イタリアでポピュラーな白いお菓子のおいしい事情

日本人にもおなじみのお菓子「メレンゲ」は、イタリアでもふだんからよく食べられる、非常にポピュラーなお菓子。でも地方によってそれぞれ特徴があるそうです。今日はその背景や作り方について、イタリア在住のフードジャーナリスト・須山雄子さんがまとめた『イタリアの地方菓子とパン』から、ご紹介します。

もろくデリケートな食感を楽しむメレンゲ

日本では、イタリアンメレンゲというと、フランス菓子の作り方にのっとり、卵白に砂糖のシロップを加えて作る。ところが当のイタリアに来たら、シロップではなく普通に砂糖(粉糖)を入れていた。そして、こちらでは「メレンゲ」ではなく「メリンガ」、焼き上げたお菓子は複数形で「メリンゲ」と呼ぶ。スイスのメリンゲンという村からやって来た菓子職人によって伝えられたからといわれている。

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作り方はごくシンプルだ。ハンドミキサーと時間がありさえすればとても簡単。卵白に数回に分けて粉糖を加えて泡立て、最後にバニラエッセンスを加える。これを、好みの形に作り、80℃のオーブンで約1時間かけて焼く、というより乾燥させる。

ある本では「少し温めながら行うと泡立てやすい」とアドバイス。また別のレシピには「最後にレモン汁を数滴たらすとより白くなり、卵のにおいも気にならない」とある。最近の料理本には、私達に馴染みのある卵白にシロップを加えて泡立てる“イタリアンメリンゲ”も、紹介されることが多くなった。

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もともとイタリアでは非常にポピュラーで各地で親しまれているお菓子だが、形や大きさに土地ごとの特徴があるようだ。ヴェネトでは「スプミーリア」と呼び、かなり大きく焼いたメリンゲの中に生クリームを詰めたりする。ミラノでは菓子店といわずパン店にも並んでいて、大きいものから小さいサイズまでいろいろ。ピンクや黄色に色づけされたもの、フルーツのフレイバーをつけたものもある。

余談ながら、スペインの人気サッカーチーム、レアル・マドリードの選手たちはスペイン語で「メレンゲス」と呼ばれる。ユニフォームの色がメレンゲのように白いところからついた愛称だそうだ。どこの国でも伝統的にメリンゲは白である。

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話を戻すと、自家製パネットーネで有名なミラノのコーヴァのメリンゲは大きな丸い形で、「泡」に由来する「スプモーネ」の名をつけている。別の店は小さなドーム2個を貼り付けたカップルスタイル。「泡立てた生クリームを間に挟んで食べるのが正式」とのことで、秋風が立つと一段と売れ行きが上がると話していた。

同じカップルでも、ピエモンテ州アスティに行けば、特産のヘーゼルナッツを細かくして生地に混ぜて焼き、砕いたトッローネをミックスした生クリームを挟んでサービスする。同じピエモンテのボルゴマネーロにある「ピノッキオ」(リゾットで定評のあるリストランテ)では、食後のパスティッチーニ(プティフール)の盛り合わせに小さなクネル形のメリンゲを入れることもある。

「絞り袋で絞れば、簡単にきれいな形に仕上がる。でも、スプーンで形を作ったほうが手間はかかるけど、もろく柔らかいデリケートな食感が出せるんだよ」とシェフのピエロ・ベルティノッティさん。

この口溶けのよいメリンゲと、ふんわり泡立てた生クリーム、それに香りのよい甘いいちごを合わせると最高! とニッコリ笑った。

メリンゲの作り方

【材料(作りやすい分量)】
粉糖…75g
卵白…2個分
バニラエッセンス、レモン汁…各少量

【下準備】
・オーブンを110℃に温める。
・卵白は常温に戻す。

【作り方】
1.ボウルに卵白とバニラエッセンス、レモン汁を入れてハンドミキサーで泡立て、少しずつ粉糖を加える。
2.ボウルを逆さにしても落ちてこないくらい固く泡立ったら、ハンドミキサーをはずし、絞り袋に入れてオーブンシートを敷いた天板に好みの形に絞り出す。
3.110℃のオーブンに入れ、50分ほど様子を見ながら焼く。

【memo】
◆ 卵黄が少しでも混ざると、泡立ちも悪くなりきれいなメリンゲができないので、注意して卵白を分けてください。
◆ 食用色素を入れてカラフルにしても。また、コーヒーやココア、いちごのジュースなどで、お好みの色づけや風味づけを楽しんでください。

 

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須山雄子(すやま ゆうこ)/東京・品川生まれ。明治学院大学社会学部卒業後、渡伊。ペルージャ外国人大学、ペルージャ州立ホテル学校調理人課コースを経て、1984年よりミラノ在住。レストラン、食材など食関係についての取材及びコーディネート活動を続ける傍ら、毎日イタリア料理を作る主婦でもある。著書に『イタリアの地方菓子』(料理王国社刊)。多くの雑誌、書籍にて精力的に活躍、『イタリアのレストラン』『イタリアの地方料理』『リーゾ』(以上柴田書店刊)、『お菓子の基本大図鑑』(講談社刊)、『ダル・ペスカトーレ 至極のレシピ集』(日本文芸社刊)などに携わる。

撮影:Giovanni Gerardi