スギアカツキ【たまごのはなし】第8回 心も開く「オープンオムレツ」を作る極意

食文化研究家のスギアカツキさんとの、好きなもの談義から始まったこの連載。「みなさん、一番大好きな食べ物ってなんですか? 考えるだけで楽しくなりますが、私は『たまご』という食材に行きつきます。世界中どこでも食べることができ、その国・エリア独特の料理法で調理され、広く愛されている。そしてなにより、たまごのことを考えるだけで、ワクワク嬉しい気分になってしまうんです。そこで、連載名を『たまごのはなし』と題し、たまごにまつわる“おいしい・たのしい・嬉しい”エピソードを綴っていきたいなと思います」

先日、梅雨を逃れるべく初夏のイギリスを旅して参りました。英国は、あらゆるものが多様性を持つ、私にとって健やかな夢を感じる世界。ゆっくりと羽を伸ばしながらの“おいしいもの探し”は、大きな楽しみでもありました。

さて、イギリスと言えば「朝ごはん」。言わずもがな、イングリッシュブレックファーストに欠かせない存在として、“卵料理”があります。目玉焼き、スクランブルエッグ、スコッチエッグ……、毎日バリエーションを変えて味わいましたが、その中で最も心に残ったのが、「オープンオムレツ」でした。


日本でオムレツと言えば、ラグビーボール状にまとめられたもの、半月状に包まれたものが主流ですが、英国では満月状のオープンタイプも多く、焼き方やトッピングバリエーションの豊かさに驚かされたほどです。



そしてふと感じたのが、「たまごが開いていると、心も開く」ということ。もちろん完全なる感覚の問題ですが、鮮やかなイエローで描かれるオープンオムレツの世界観は、どこか開放的であり、エネルギーが外に向いているように感じたのです。食べて元気になるとは、こういうことなのでしょうか。

帰国後、この陽気な食べ物を自宅でも実践することに。包む技術を要するオムレツとは違い、失敗しない自信とワクワク感を携えながら、料理スタートです。

まずは、具材の選定と下準備。厚切りベーコン、ブロッコリー、ホワイトマッシュルームをチョイスして、それぞれほどよく炒めておきます。




具材選びにルールはありません。自分が好きなものや気になるもの、何を入れてもOKなんです。チーズ、枝豆、かまぼこ、唐辛子、アボカド、海苔、残り物のキンピラやヒジキ煮……。どんどんアイディアが生まれることでしょう。具材を卵液に投入して混ぜれば、準備は完了。卵3個で2人分が作りやすい大きさです。




そして焼き本番。よく熱したフライパンに油を薄く塗り(フッ素樹脂加工のフライパンでは不要)、卵液を注ぎましょう。卵液が入ったら、具の配置バランスを箸で調整し、完成図をイメージしてください。




それから、フタをして火加減を超弱火に落とします。そうです、引っくり返す工程はありません。仕上がりの美しさを考えて、などと理屈を言いたいところですが、とにかくカンタンなのが最高なのです!




超弱火で5分焼き、火を止めて5分蒸らしてください(IHコンロの場合、保温5分)。フタを開けて、フライ返しでオムレツを取り出し、お好みの皿に乗せて完成です。ああ、なんとなく抽象画のような仕上がり! 上手い下手など関係ありません。




今回はしっかり固焼きに仕上げましたが、お好みの半熟具合をいろいろ探して見極めてもよいでしょう。トロトロのおいしさも魅力的です。




切り分けて、ケチャップを添えました。もちろん、マヨネーズでもソースでもどうぞご自由に!




この料理を楽しむための条件があるとするなら、シンプル料理を楽しむ“好奇心”以外に他なりません。ぜひ皆さんも、オープンマインドで楽しんでみてくださいね!

 

【たまごのはなし】は、ほぼ隔週火曜日に掲載します。


<Back Number>
第1回 「たまごがおいしい」って、どういうこと? おいしいゆでたまごを作る3つの作戦
第2回 「平飼いたまご」って何?
第3回 「リボンたまご」を作ってみよう
第4回 手軽に買える実力派。“たまご”を感じるおいしいプリン3選
第5回 素材をおいしくするたまごの魔法。「ピカタ」を作ろう
第6回 “黄身だけ”に夢中
第7回 フワフワのおいしいトライアングル。「究極の卵炒め」を作ってみた!

 

文・写真:スギアカツキ/食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)が好評発売中。
Instagram:@sugiakatsuki
Twitter:@akatsukinohana

この連載のバックナンバー

▼ もっと見る