【コラム】京大カレー部が現地に行ってみた。絶品!南インドの朝ごはんとは

カレー愛にあふれ、日々スパイス活動を行っている京都大学カレー部。スパイスとは何か、どこから来たのか。インドでは本当に朝から晩までカレー三昧なのか。その目で確かめるために、インド・ケーララ州に飛んだ4代目部長(2017年当時)・石崎 楓さん。本日は石崎さんの著書『京大カレー部 スパイス活動』から、南インドの朝ごはんをご紹介します。

南インドでは小麦文化は外来の文化だ。近年北インドとの経済交流が活発になり、チャパティやミルクなどの食文化がかなり混じるようになってきたが、それでも基本的には豊かな米文化が毎日のごはんを彩っている。

しかし、ケーララの人々は朝にはライスを食べない。ワヤナードでは、近年家庭にもガスコンロが普及したが、みんなライスは竃に薪をくべてぐつぐつと炊き上げている。なんといってもお米は薪で炊くほうがおいしい。

でも、それだと朝ごはんのときにはライスが間に合わない。でも大丈夫。だからこそ、ケーララには豊かな時短朝ごはん文化がある。クレープ風、パンケーキ風、蒸しパン風に、クスクス風やコロッケ風のものまで。

実を言うと、私がケーララで大好きなものは、何と言っても朝ごはんだ。たかが朝ごはん、されど朝ごはん。幸せな一日の始まりは、素敵な朝ごはんから。


ディバキ母さん:ケーララ州ワヤナードのNGOが運営するゲストハウスで働く元気なお母さん。NGOが支援している指定少数民族のシングルマザー。畑の野菜で毎日美味しいごはんを作ってくれた、私のインドのお母さん。

1 みんな大好き! 米粉のクレープ「ドーサ」

前の晩に米粉と小麦粉、ウラッドダルといわれる白い豆を少量加えてミキサーで撹拌(かくはん)し、一晩おいて発酵させる。小麦粉と米粉の割合は地域や家庭によってさまざまだけれど、ディバキ母さんは1:1の割合だった。少し酸味のある、もちもちとした食感がたまらない。中に挟むにも、何かつけるにも、さまざまな食べ方のバリエーションがある。


中にココナッツとジャグリー(ココナッツシュガー)が入った甘いドーサ。


プレーンドーサとカレー。


レストランのドーサはとても大きい。プレーンドーサにはたいていココナッツチャトニ(スープ)とサンバル(南インド伝統のカレー)がついてボリュームたっぷり。

2 甘いココナッツとバナナリーフの香りが絶妙「アダ」

小麦粉を練った生地に、たっぷりのココナッツとココナッツシュガー、そして砕いたカルダモンを挟み、バナナリーフに包んで蒸し上げたとっておきの一品。カルダモンとココナッツの甘さがバナナリーフの香りに包まれながら出会う。目覚めてそこに出来立てのアダがあった朝には、熱帯の太陽はより輝き、風はよりさわやかにそよぎ、世界はより美しくなる。揚げ物とちがい手が汚れないので、おやつにも。


アダ。バナナリーフを開けたところ。

3 まん丸の形がかわいい、朝ごはんの定番「イドリー」

初めて南インドの朝ごはん文化に触れたのは、アンドラ・プラデーシュ州の港湾都市、ヴィシャカパトナムのホテルの朝ごはんだった。何やら丸く平べったく、不思議な形をしたその食べ物を、ココナッツ味とトマト味のソースにつけて食べる。米粉を練って蒸したその食べ物はイドリーだ。その実態は、米と豆を練って一晩おいた生地を専用の蒸し器で蒸した小さな蒸しパン。ころころっとしたフォルムがユニークな南インドの朝の顔だ。蒸し上がったイドリーの、透明で美しく真っ白な純真さがたまらない。ドーサと同じように、レストランではサンバルとココナッツチャトニがついてくる。


蒸したてのイドリーにはどこか透明感がある。

4 南インドの蒸しパンケーキ「アッパム」

米粉、小麦粉にココナッツをたっぷりと加えて作る、ココナッツ味の蒸しパンケーキ。お好みで砂糖や、ココナッツミルクをかけていただく。南国気分をたっぷり味わえる幸せな朝ごはん。


クミリーのレストランで出てきたアッパム。

5 カルダモン香る「ウンニアッパム」

散歩して迷い込んだ集落の大邸宅に招かれ、美人の奥さんに作っていただいたのが、美味しいストレートチャイと、カルダモン香るウンニアッパムだった。アッパムの生地にお砂糖を加えて、そのままココナッツオイルで揚げたもの。こんがりと揚がった色が食欲をそそるのだ。


朝のアッパムの残りの生地をウンニアッパムにしておやつに。

6 インドのクスクス「ラヴァ・ウプマ」

セモリナ粉を煎って、炒めた野菜を加え、混ぜ合わせたインドのクスクス。蓋をして10分ほど放っておけば炊き上がってしまう、忙しい朝にぴったりの時短レシピだ。ふわふわの独特の食感で、食べやすく美味。このようにインドではそれぞれの穀物の特徴を生かしたさまざまな料理が食卓を彩っている


忙しい朝にぴったりのラヴァ・ウプマ。

7 みんな大好き。バナナと一緒に「プットゥ」

ココナッツと米粉を混ぜて筒状の型に入れて、蒸し上げる。蒸したてアツアツのプットゥの隣に添えるのは、カレーではなくなんとバナナ! バナナとプットゥを手でつぶして、こねて食べる。これ、甘酸っぱいバナナと、ココナッツがぴったり合って絶品だ。


プットゥを蒸し上げている姿もユニーク。


ぽこぽこっと出てくるプットゥたち。かわいい。


添えるのは伝統的な小さくて甘酸っぱいバナナ。

8 インドでは珍しい麺類「イディヤパン」

これはなんと、インドでは非常に珍しい麺類。米粉と水を練っただけの、いわゆるビーフンで、さっぱりあっさりとしていてカレーが進む。先ほどのプットゥを作るときに使った、長い筒状の器具の中身を変えて、手回しで押し出して麺状にする。それをイドリーを蒸すプレートにのせて蒸せば、出来上がり。


見た目も味も素麺のような、イディヤパン。


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石﨑 楓(いしさき かえで)/1994年生まれ。富山県南砺市出身。カレー研究家。京大カレー部4代目部長。京都大学文学部地理学専修在籍中。パキスタンカレーの聖地・富山県で育つ。中学時代に大阪でインドカレーに出会って以来、富山県のカレー店をセーラー服で巡っては、 カレーを炊く日々を送る。大学入学後は京大カレー部にて、スパイス活動に勤む。さらには部員を連れて日本各地の野山を回り、その土地の食材でカレーを作り販売。長期休みには東南アジアや日本の農村に滞在し、食と農を体験。半年間の富山県での農場研修の後、インド各地の農村に滞在し、その土地の自然と人の関係を体感する。南インドの小規模農家によるスパイス栽培システムに関心がある。

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