【コラム】ランチにはポテトチップス? イギリスの家庭料理に見るじゃがいものおいしい食べ方・その2

前回に続き、イギリスの料理やお菓子の研究を続けている砂古玉緒さんに、イギリスでのじゃがいも事情を伺います。日本ではおやつ感覚で食べるポテトチップスですが、イギリスの「クリスプス」は昼食時にも登場するようです。「イギリス人にとって、じゃがいもは主食。昼はクリスプス、夕食でメインといっしょに食べるのはブレッドではなく、じゃがいもです。ここでは、じゃがいもをおいしく食べるイギリス流のポイントなどをご紹介します」。

じゃがいもの下ごしらえのコツ

●ゆで方●
イギリスでは毎日じゃがいもを主食として食べるため、手間をかけずに調理することも大切なようです。ほとんどの家庭では先に皮をむき、ひと口大に切ってから、じゃがいもがかぶる量の水に入れて、ゆでます。大きめに切ってゆでると、中心に火が通るころには表面が加熱しすぎの状態となります。また皮をむくときは、ソラニンなどの毒素を含む芽を必ず取り除きます。


●表面のでんぷん質を洗います●
じゃがいもを切ると表面にでんぷん質が出てきます。「チップス」や「クリスプス」のようにひとつひとつをばらばらに仕上げ、さっくり揚げたい料理は、切ってすぐに水で洗います。「ハッシュブラウン」のように、色変わりを防ぎ、すっきりした味にするときにも洗います。切ってからしばらく放置すると変色するので、洗わない場合はすぐに調理しましょう。


じゃがいもの基本知識

●歴史●
じゃがいもの原産地は南米。それをスペイン人が持ち帰り、その後ヨーロッパ全土に広がりました。寒さに強く、生育期間が短く、しかも栄養価に富むじゃがいもは、厳しい環境のイギリスでもよく育ち、たび重なる飢饉も、じゃがいもでしのいできたという歴史があります。日本へは、江戸時代にジャワ島から入ってきました。北海道での栽培が近年増加し、現在、日本の総生産量の8割近くが北海道産です。

●旬●
一年じゅう安定して出回りますが、「新じゃが」が出てくるのは3月から5月ごろ。皮が薄く、小ぶりで、みずみずしさもあります。

●選び方●
毒素を含む芽が出ていないかをチェック。新じゃがは、手でむけそうなくらい薄い皮のものがよいでしょう。古くなるにつれて皮が厚くなります。メークインは表面がなめらかで、色が明るいものを選びましょう。

●保存方法●
風通しのよい冷暗所がよいでしょう。冷蔵庫に入れる場合は、新聞紙に包み、できることならさらにポリ袋などに入れます。発芽を抑制する働きのあるエチレンガスを出すりんごなどといっしょに置いておくと、より長期間保存できます。ただし、りんごとほかの野菜をいっしょにおくと、ほかの野菜の成熟が進むので、じゃがいもとりんごだけをセットにして保存します。

男爵いもとメークインの使い分け

日本には約150種類のじゃがいもの品種があるとされていますが、ここでは、一般的な男爵いもとメークインをご紹介します。

形を残したいスープやシチューの場合は、煮くずれしにくいメークインを使います。チップスやジャケットポテトのように揚げたり、オーブンでローストする場合はお好みですが、揚げる場合やチップスのようにほくほくとした食感を楽しみたいものは、でんぷん質の多い男爵いもを、薄く揚げてクリスピーさを楽しみたい場合はメークインを使うのがおすすめです。

●男爵いも●
形は球状で、ややゴツゴツしています。身は白っぽく、でんぷん質が多く、加熱するとほくほくした食感になるのが特徴です。

●メークイン●
楕円形で、表面はつるっとしています。身は黄色っぽく、加熱すると粘り気が出るのが特徴です。男爵いもに比べて、少し甘く感じます。


では、じゃがいもを使ったイギリス料理「クリスプス」の作り方をご紹介しましょう。

クリスプス

日本では「チップス」の名でおなじみですが、イギリスでは「クリスプス」です。
ちなみにイギリスではファストフード店で売っているような、スティック状のものを「チップス」と言います。

【材料】(2~3人分)
じゃがいも……2個(200g)
塩……少量
揚げ油(サラダ油)……適量

【作り方】
1. じゃがいもは皮つきのまま2mmの厚さの薄切りにし、水に約2分さらす。水気を切り、ペーパータオルでしっかり拭く。
2. 120℃の揚げ油で、じゃがいもを7分揚げ、網に取る。
3. 油の温度を170℃に上げ、再度じゃがいもを3分揚げ、網に取って油分を切る。熱いうちに塩を高い位置からふる。
低い温度で油を静かな状態にしてじっくり揚げることで、カリッと揚がります。

砂古さんの著書『イギリスの家庭料理』のページをめくると、多くの料理にさまざまなかたちでじゃがいもが登場していることに気づきます。そんな目線で本を見てみるのも面白いですよ。


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砂古玉緒(さこ たまお)/広島県生まれ。約10年のイギリス在住時に、イギリス料理とイギリス菓子の取材、研究、製作を行う。2004年に教室をスタートし、日本とイギリスで人気を博す。現在、テレビ、雑誌、書籍、イベント、全国のカルチャースクール講師などで活躍中。2014年NHK連続テレビ小説『マッサン』で、スコットランド料理・菓子製作指導を担当。著書に『お茶の時間のイギリス菓子 伝統の味、地方の味』(世界文化社刊)ほかがある。
http://www.britishpudding.com/

撮影:石川奈都子

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