【トッローネ】イタリアのクリスマスに欠かせないヌガーのお菓子。そのロマンチックな由来とは?

クリスマスのお菓子といえば、ブッシュ・ド・ノエルやジンジャークッキーを思い浮かべるかたも多いと思いますが、イタリアの家庭で欠かせないのは「トッローネ」というヌガー。その由来や作り方を、イタリア在住のフードジャーナリスト・須山雄子さんの著書『イタリアの地方菓子とパン』からご紹介します。

クリスマスに欠かせないヌガー

バイオリンで知られるクレモーナは、中世の面影が残る美しい街である。その中央広場に高くそびえる鐘の塔「トッラッツォ」は街の誇りだ。そのクレモーナの銘菓といえばトッローネ、細長い箸箱状の白いヌガーである。今では、イタリア全国の家庭でクリスマスシーズンには欠かせないドルチェだ。

*   *   *

その昔、1441年10月25日に行なわれた、ヴィスコンティ公爵家の令嬢ビアンカ・マリアとフランチェスコ・スフォルツァの婚礼を祝う宴に、高くトッラッツォのように飾られたのが純白のこのドルチェ。それに由来してトッラッツォからトッローネが生まれた……なんともロマンチックなストーリーではないか。

しかし、トッローネのルーツは、さらに時代をさかのぼる。すでにローマ時代の著名な歴史家プリーニオは、はちみつとヘーゼルナッツを混ぜ合わせたアクイチェルスという菓子がトリノで作られていたとし、南部のベネヴェントでも、歴史家ティート・リヴィオが、トッローネの前身、白いナッツ入りのドルチェ、クペディアが作られてきたと書き残している。またシチリアでは、ごまを甘く固めたクッバイタも知られている。おそらく、はちみつを煮てナッツ類を混ぜ合わせた菓子は、古くから作られ、それらが時を経て洗練されて、現代のトッローネになったのだろう。

*   *   *

トッローネを口に含むと、サクッとした歯触りが心地よく、ナッツの香ばしさと口溶けのよい飴がミックスされて、風味豊かな甘さが後を引く。このドルチェは、砂糖とはちみつと卵白、ナッツを煮て作る。作り方は簡単そうに見えるが、この食感を作るには加熱の頃合いが難しく、ポイントらしい。砂糖とはちみつをそれぞれ長時間煮て、色づかせずガラスのような飴に仕上げるには経験がいるようだ。

アーモンドやヘーゼルナッツのほか、ピスタチオ、ピーナッツ、フルーツの砂糖漬けが入るものや、チョコレートコーティングしたトッローネもあり、またリキュールを含ませたスポンジ生地を挟んだものも出てきている。サイズも、トロンチーノと呼ばれる小さなものから2kgもあるような大きいもの、デコレーションした丸いホールケーキ型まで、またサックリしたトッローネのほか、テーネロとかモルビドと呼ばれる柔らかなタイプもあり、さまざまな種類がある。2014年には、カラーブリア州のバニャーラのトッローネがI.G.P.(※)に認定された。これは、地元のアーモンドを加え表面にグラニュー糖を、あるいはココアパウダーをコーティングしたふたつのタイプがある。

全国で親しまれているドルチェだが、クレモーナでは毎年11月末にトッローネの祭りが催され、訪れる人々にふるまわれている。

※I.G.P.とはすぐれた農産物を規制、保護、保証するEUの制度のひとつで、保護指定地域表示と訳されるもの。

トッローネの作り方

【材料(作りやすい分量)】
グラニュー糖…200g
はちみつ…200g
アーモンド…500g
バニラパウダー…少量
卵白…2 個分
塩…少量
レモンの皮(すりおろす)…適量
オスティア(極薄タイプ)※…適量
※オスティアは聖体として教会のミサでも使われている。作る際は材料の小麦粉と水をよく混ぜて生地を作り、金属製の円形オスティア用焼成器で焼く。

【作り方】
1.鍋に水50mlとグラニュー糖を入れ、弱火にかけ、かき混ぜながら溶かし、色が薄めのカラメルを作る。
2.アーモンドは180℃のオーブンで7~8分ローストする。
3.はちみつはボウルに入れ、湯煎にかけて溶かし、1のカラメルに2のアーモンド、バニラパウダー、レモンの皮とともに加え、混ぜ合わせる。
4.卵白は塩を加えてハンドミキサーで固く泡立てて3の鍋に加え混ぜ、弱火で約1時間煮る。
5.オスティアの上に4を置き、2cm厚さに平らにして、更に上にオスティアをのせ、冷ましてから適当な大きさに切り分ける。

【memo】
アーモンドの代わりにヘーゼルナッツ、ピスタチオなど、ほかのナッツ類を利用してもおいしくできます。
 
須山さんの著書『イタリアの地方菓子とパン』では、さまざまな背景から生まれ、育まれてきた多彩なイタリア全州の地方菓子とパン94品について、そのエピソードやレシピを紹介しています。

<関連記事>
●【コラム】イタリアの地方出身のドルチェとパンが、世界中で愛される理由とは?
●【コラム】メレンゲスの由来はやっぱりメレンゲ? イタリアでポピュラーな白いお菓子のおいしい事情

須山雄子(すやま ゆうこ)/東京・品川生まれ。明治学院大学社会学部卒業後、渡伊。ペルージャ外国人大学、ペルージャ州立ホテル学校調理人課コースを経て、1984年よりミラノ在住。レストラン、食材など食関係についての取材及びコーディネート活動を続ける傍ら、毎日イタリア料理を作る主婦でもある。著書に『イタリアの地方菓子』(料理王国社刊)。多くの雑誌、書籍にて精力的に活躍、『イタリアのレストラン』『イタリアの地方料理』『リーゾ』(以上柴田書店刊)、『お菓子の基本大図鑑』(講談社刊)、『ダル・ペスカトーレ 至極のレシピ集』(日本文芸社刊)などに携わる。

撮影:Giovanni Gerardi

イタリアの地方菓子とパンの関連記事