スギアカツキ【たまごのはなし】第17回 自然のうま味が練りこまれた、絶品「蝦子麺」を知っていますか?

海老(エビ)はうま味の宝庫ですね。え、たまごの話じゃない? いいえ、たまごのはなしですよ。この連載では、「たまごが一番大好きな食材」という食文化研究家のスギアカツキさんが、その経験と好奇心を生かしたさまざまなアプローチで「たまご」を掘り下げます。

今日は、いつもと違うたまごのお話です。みなさん、「海老の卵」って召し上がったことはありますか? もしかすると、甘エビやボタンエビの刺身を食べた時に、季節限定で“子持ちエビ”に出合ったことがあるかもしれません。あの天然石のような美しい青色をまとった粒々が、エビの卵。味よりも食感のほうが印象深いかもしれません。

今回は、私が長年愛してやまない食材である、エビの卵を練り込んだ「蝦子麺」という乾麺をご紹介したいと思います。


「蝦子」とは、エビの卵を乾燥させたもの。中国料理の世界では「シャーヅ」と呼ばれ、「うま味調味料」が登場する以前から、“自然のうま味”として活用されてきた歴史ある食材なのです。主な活用例としては、蝦子が持つ風味や香りを生かした煮込み料理、炒め料理が知られていますが、この蝦子を加えて作られるのが、蝦子麺なのです。


鶏卵の入ったたまご麺の材料に蝦子を練り込み、蒸した麺を干した、シンプルかつヘルシーな乾麺で、他の麺にはない魅力がたくさん凝縮されています。もしかすると、香港や欧米の中華料理店で、出合ったことがある人もいるかもしれませんが、日本でも輸入食材店や大きなスーパーで購入することができます。

使い方としては、通常のラーメンのように汁麺にしたり、茹でてから焼き麺として楽しむ方法があります。私はこの麺を茹でて、そこに鶏がらスープの素を加えてシンプルに仕上げる汁麺が大好物。麺からスープに染み出たエビの旨味と風味が品よく漂い、繊細な細麺をゆっくりいただく時間には、ただならぬ幸せを感じます。


最近、エビのミソを活かした“海老味噌ラーメン”という新しいテイストが、ラーメン界において確固たる存在感を持ち、ラーメン店のみならずインスタントラーメンでも人気を博しているようです。かく言う私も、ファンの一人だったりするのですが、やっぱりこの蝦子麺は格別。シンプルかつ素朴でありながらも、その魅力がしっかり詰まった食材には、人を癒やすパワーがあるのかもしれません。忙しい時、これをサラッといただくだけで、身も心も味覚もリセットできるような気がしています。


【たまごのはなし】は、ほぼ隔週火曜日に掲載します。

 

文・写真:スギアカツキ/食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)、女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)が好評発売中。
「みなさん、一番大好きな食べ物ってなんですか? 考えるだけで楽しくなりますが、私は『たまご』という食材に行きつきます。世界中どこでも食べることができ、その国・エリア独特の料理法で調理され、広く愛されている。そしてなにより、たまごのことを考えるだけで、ワクワクうれしい気分になってしまうんです。そこで、連載名を『たまごのはなし』と題し、たまごにまつわる“おいしい・たのしい・うれしい”エピソードを綴っていきたいなと思います」
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Twitter:@sugiakatsuki12

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