【レシピ・カトル・カール】一流パティシエに教わるシンプルでおいしい“ザ・パウンドケーキ”

少し肌寒い日が続くと、いよいよ食欲の秋到来の気配。焼き菓子が恋しくなってきました。そこで今週ご紹介するスイーツは、パウンドケーキの王道、カトル・カールです。このシンプルでしみじみとおいしいケーキを教えてくださるのは、東京・調布の名店「サロン・ド・テ・スリジェ」のシェフ・パティシエを長年務められたことでも知られる、東京・上原「ASTERISQUE(アステリスク)」オーナーシェフの和泉光一さんです。
「カトル・カール」とは、フランス語で「4/4」のこと。4つの基本材料(小麦粉、砂糖、バター、卵)を1/4ずつの割合で使うことから、その名前がつけられています。このケーキで、私がこだわったのは、上白糖を使うこと。吸湿性があるので、時間が経つにつれてケーキがしっとりと仕上がります。一つひとつの手順をていねいに行えば、必ずおいしいケーキに仕上がります。シンプルながらも味わい深い、生地そのもののおいしさを楽しんでください。
材料(パウンド型2台分)
- バター(食塩不使用)
- 200g
- 上白糖
- 200g
- 全卵
- 200g(約4個)
- 薄力粉
- 200g
- ベーキングパウダー
- 6g
- レモン(皮を使用)
- 1/2個
- デコレーション
- あんずジャム
- 100g
- ピスタチオ(製菓用の無塩タイプ)
- 100g
- 型用
- バター(食塩不使用)
- 適量
- 強力粉
- 適量
作り方
- 道具18×8×6.5cmのパウンド型2個 ハンドミキサー おろし金 ざる パレットナイフ 万能こし器 小鍋 刷毛 網 軍手 ※オーブンは予熱180℃、焼成160℃で40~45分
- 準備● バターを室温で柔らかくする。
● 卵を室温にもどし、溶きほぐす。
● 型にクリーム状のバターを塗り、強力粉をまぶす。
● レモンの皮(黄色い部分のみ)をすりおろす。
● 上白糖をざるでふるう。 - 1-1
生地を作る柔らかくしたバターを泡立器でほぐし、すり混ぜるように練ってかたまりのないクリーム状にする。
- 1-2
ふるっておいた上白糖を加え、全体になじむまで混ぜる。
- 1-3
ハンドミキサーに持ち替え、高速で泡立てる。※充分に泡立てて空気をたっぷり含ませることで、焼いた際にバターが抱き込んだ小さな気泡が核となって生地がよく膨らみ、きめ細かくふっくらとした仕上がりになる。
- 1-4
少量の生地を指先にとり、砂糖の粒が残っていないかを確認する。砂糖が充分に混ざり、空気を含んで白くふわっとした状態になればよい。
- 1-5
生地の確認。※混ぜ方が足りないと砂糖が溶けきらずに残り、焼き上がった生地の表面にプツプツと白い斑点が浮き出てしまう。
- 1-6
泡立器で軽く混ぜてきめを整える。この段階でバターと砂糖が混ざり合った、甘くクリーミーな香りがする。
- 2-1
1-6に用意した溶き卵を大さじ1ほど加え、泡立器でなめらかになるまでよく混ぜる。生地の中央部分で小さな円を描くように混ぜ、少しなじんできたら周囲を抱き込むように混ぜていくとよい。
- 2-2
残りの溶き卵を4~5回に分けて加え、そのつど完全になじむまで混ぜる。途中でボウルの側面に飛び散った生地をゴムべらでぬぐい、全体を均一に混ぜる。※分離を防ぐため、溶き卵は必ず少量ずつ加えること。
- 2-3
混ぜ終わりの状態。バターをしっかり泡立てているので、混ぜ終わりの状態は思ったより白っぽい。
- 3
すりおろしたレモンの皮を加え、ゴムべらで軽く混ぜる。※レモンの皮は、さわやかな風味づけと卵独特の臭みを消すために加える。
- 4-1
薄力粉とベーキングパウダーを合わせてふるい、3に一度に加える。ゴムべらで生地をボウルの底から持ち上げ、ぱたっと返すようにして混ぜていく。あせらず、ゆっくりと混ぜればよい。
- 4-2
生地のでき上がり。粉気がなくなり、つやが出てきた
ら混ぜ終わり。※混ぜすぎると粘りが出てふくらみが悪くなるので、粉が均等になじんだ状態から4~5回混ぜ、少しつやが出てきたら手を止める。 - 5-1
焼く生地を2等分し、用意した2つの型にゴムべらで生地をすくい、すとんと落とすように入れていく。※型の側面をゴムべらでこすらないように注意する。バターと強力粉をこすり取ってしまうと、その部分に生地がくっついて型からはずしにくくなる。
- 5-2
生地を均一に広げ、型の四隅までゴムべらの先を使って生地をしっかり詰める。
- 5-3
表面をパレットナイフで軽くならし、平らにする。
- 6-1
予熱したオーブンに入れ、160℃に下げて40~45分焼く。
- 6-2
焼き上がりの確認。焼き上がりは、中央の割れ目の中にも焼き色がつき、指先で押すとふわふわとして軽く跳ね返ってくる感じ。押してプシュプシュと音がするような状態なら、さらに5分ほど焼く。※中央に竹串を刺して確認してもよいが、この方法だと穴が残り、また竹串を刺した部分の生地が詰まってしまう。できれば焼き色と手の感触で確かめてほしい。
- 6-3
焼き上がったら、軍手をしてすぐに型から取り出し、網の上で完全に冷ます。※冷凍保存する場合はこの状態で。
- 7-1
デコレーション小鍋にあんずジャムを入れて弱火にかけ、とろとろと流れるくらいの柔らかさにする。
- 7-2
刷毛でケーキの側面、上面の順に塗る。※あんずジャムは固まりやすいので、塗りにくくなってきたらそのつど弱火にかけて柔らかくすること。
- 7-3
角の部分にたまったあんずジャムを、指先でぬぐい取る。
- 8
細かく刻んだピスタチオを、対角線を引くように飾る。
Point
食べごろと保存3日後からがしっとりとしておいしくなります。保存はラップで包み、常温で1週間、冷蔵庫で2週間。デコレーション前の状態でラップで包み、フリージングパックなどに入れて冷凍すれば、1~2か月保存可能。食べるときは冷蔵庫で解凍を。
Chef’s Advice
バターは柔らかくしすぎたり溶かしてしまうと、泡立てても空気を含ませることができません。失敗を防ぐためにも、前の晩に冷蔵庫から出し、室温で柔らかくする方法をおすすめします。卵は必ず少量ずつ加え、そのつどなじむまで混ぜます。量が多いと混ぜにくいだけでなく、バターが分離してきます。分離してしまうと、そのあとどんなに混ぜ続けてもつながらず、粉を加えたり、温めたりと応急処置をしても、おいしいケーキには仕上がりにくくなります。手間はかかりますが、このポイントをしっかり守ってください。粉類は使う直前にふるいましょう。
和泉光一(いずみ こういち)/東京・成城「成城アルプス」で修業をスタート。2000年~09年まで東京・調布の「サロン・ド・テ・スリジェ」のシェフパティシエを務めたのち、12年東京・上原に「ASTERISQUE(アステリスク)」をオープン。オーナーシェフを務める。05年ワールドショコラマスターズ日本代表、総合3位ほか、コンクールの受賞多数。
撮影:松本祥孝
一流シェフのパウンドケーキ

本書は一流シェフ10人のおいしさへのこだわりが詰まったパウンドケーキと、パウンド型を利用した和洋菓子のレシピ集。シェフ一人ひとりが大切に培ってきた味を、一般的な18cmサイズのパウンド型で作れるレシピにしてくれました。初心者でも作れるように…